学校の歯科検診で「異常なし」でした
6月は、学校や幼稚園の検診の結果表を持って来院される方が増える時期です。
「異常なしでした」とお持ちいただくこともあれば、「受診してくださいと書かれました」とお持ちいただくこともあります。どちらの場合も、お伝えしたいことがあります。
まず、学校の検診にできることと、できないこと
院長の私自身、幼稚園の歯科検診にうかがっています。ですので、現場のことは分かっているつもりです。
- 大勢のお子さまを、短い時間で診ます
- 道具は鏡とライトだけです
- お子さまのお口は唾液が多く、よく見えないことも珍しくありません
これは、学校歯科医の先生の技量の問題ではありません。条件の問題です。 正直なところ、マイクロスコープとエアー(唾液を飛ばす風の出る道具)とレントゲンを担いで行きたいくらいですが、さすがにそうもいきません。
見ただけでは、歯と歯の間は分かりません
ここが肝心なところです。数字でお伝えします。
歯と歯の間(隣接面)のむし歯について、見るだけの診査と、レントゲン(咬翼法)を比べた研究があります。
- 見るだけの診査では、隣接面のむし歯の半分以下しか見つからない
- レントゲンを使うと、9割以上が見つかる
14歳のお子さま317人を、1歯面ずつ突き合わせて調べた研究でも、見ただけで数えた本数は、レントゲンで数えた本数のおよそ3分の1にとどまりました。
つまり、「見て異常なし」は、「歯と歯の間に何もない」という意味にはならないのです。
当院でも、学校の検診で「異常なし」とされていたお子さまのレントゲンを撮ると、乳臼歯の歯と歯の間にむし歯が見つかる、ということがあります。
乳歯は、とくに分かりにくいのです
乳歯の虫歯の特徴のページに書いたとおり、乳歯のむし歯はあまり黒くなりません。白く濁る、茶色くにじむといった変化のほうが多く、見た目では分かりにくいのです。
そのうえ、乳歯の奥歯は面と面でぴったり接しています。 真上から見ても、そこは見えません。
さらに、お子さまは「先生、最近左上の奥歯がしみるんです」とは言ってくれません。自覚症状が出たときには、だいぶ進んでいるということが起こります。
「この前、歯医者に行ったのに」と書かれたとき
学校や幼稚園の検診では、そのお子さまがどこかに通院しているかという情報がありません。 ですから、気になる歯があれば「受診してください」とチェックを入れることになります。
治療済みの歯であっても、そう書かれることがあります。 そういう事情ですので、どうかご理解ください。
レントゲンは、どれくらいの間隔で撮るのか
「半年に1回」と決まっているわけではありません。お子さまのむし歯のなりやすさによって変えます。
米国小児歯科学会(AAPD)や米国食品医薬品局(FDA)の考え方では、
- むし歯がある、またはなりやすいお子さま 6〜12か月ごと
- むし歯がなく、なりやすさも低いお子さま 12〜24か月ごと
を目安としています。一律に決めるのではなく、一人ひとりで決めるという考え方です。
被曝量については小児歯科とレントゲンのページに数字を載せてあります。お口に入れる1枚で、日本で暮らして1日に自然に浴びる量と同じくらいです。
小児のレントゲンは、慣れが要ります
小さなお子さまのレントゲン撮影には、技術が要ります。じっとしていられない、お口を開けていられない、フィルムが当たって痛がる。そうした理由で、あまり撮らない歯科医院もあると思います。
当院のスタッフは、小児のレントゲン撮影に慣れています。それもあって、当院では見るだけで終わらせず、必要に応じてレントゲンで確かめています。
学校の検診で「異常なし」と書かれていたけれど、本当に大丈夫かなと思われた方は、一度お口を見せにいらしてください。ご予約はネットとLINEから24時間お取りいただけます。
このコラムで参考にした資料
- 見るだけの診査では隣接面う蝕の50%以下しか検出できず、咬翼法X線では90%以上が検出できるという報告。う蝕の診査法に関する一般的な知見
- 14歳児317名で視診と咬翼法X線を1歯面ずつ突き合わせた研究(de Vries ら, 1990年)。視診のみでは隣接面の病変数がおよそ3分の1にとどまった
- 小児の歯科X線撮影の間隔(むし歯のリスクに応じて6〜12か月/12〜24か月)。Prescribing Dental Radiographs for Infants, Children, Adolescents, and Individuals with Special Health Care Needs(米国小児歯科学会 AAPD)